第15章 Ⓡ◆Boy meets Boy!(神田)
「どうせならその照れ癖を減らせよお前は。オラ、」
「んむっ」
口に突っ込まれるストローに聞き捨てならない言葉。
乱暴だと言い返そうとすれば、ほんのりと咥内に覚えのない甘みが広がった。
思わず手に持ったコップを見る。
爽やかな甘さだ…これ、レモン水?
「いいからそれ飲め。飲んだら寝ろ。明日は非番だろ、一日横になってりゃ痛みも退く」
「むぐ…ご飯は…?」
「持って来てやるから、明日は此処にいろ」
「………」
なんて言うか…ユウらしくない、心配りと言うか。
気配りと言うか。
大体なんで、そんなに男同士のセックスに手慣れてるの。
一体誰から学習してきたの。
そういうこと、本とかならまだしも、他人からなんて絶対聞きたがらなさそうなのに。
「………」
それだけ……私を、抱きたかったのかな…。
「っ」
って。
文にしたら凄い言葉だからそれ。
何それ凄い自意識過剰。
恥ずかしい。
「何百面相してんだよ。暫くは手ぇ出さないから安心しろ」
「ん、ちょ、待って。"暫く"?暫くって言った?」
つまりそれ、当面の間はってこと?
それが過ぎれば?
…また"これ"をするの?
「ぃ、ぃゃ…無理、なんじゃない、かな…?またするのは…」
「は?なんでだよ。お前だって最後は求めてただろうが」
「えっ」
「もっとって、俺の欲しがっただろ。気持ちいいって喘い」
「ええええいいいやあの!ない!ない!」
そんな憶えない!
「薬でハイになってたから記憶が飛んでんだろ」
「そんなことあるわけ…!」
「本当に否定できんのか?」
ベッドに乗るユウの膝に、体がマットレスに僅かに沈む。
レモン水を零さないようにと両手で握り締めているから、下手に暴れることはできなくて。
布団を捲ったユウの体が、私の肌に覆い被さる。
肌と肌が触れれば、さっきまでの交わりの所為かびくりと体は震えた。
「気持ちよくなったのは薬の所為だけだと思うか?ならアレは全部俺の独り善がりだったのかよ」
「っ…それ、は…」
低い、でも事情中に名を呼ぶ時は優しい声。
貫くような眼力の中に宿る、欲望の色。
触れる指先はひんやりと冷たいのに、その時ばかりは火照るように熱い。
私を求めるユウの姿に、欲情しないことは…ない。