第13章 Childhood's end
大野side
マンションに着くとしばらくして
インターフォンが鳴って、
クール便で白いでっかい箱が届いた。
あらかじめ話をしておいた板前の友だちに
電話してマンションに来てもらう。
さすがにこの鰤を捌くのはキツいから
ここは本職の手を借りることにした。
本職の手に掛かると立派な鰤も
あっという間に食材になる。
友:「大ちゃん、
全部鰤シャブ用にするのは
いくらなんでも多すぎるから一部、
刺身用の柵にしといたよ」
「ありがとう!さすがの気遣い、感謝だね」
友:「どういたしまして。
あらの部分どうする?
これだけ新鮮なら
大根と炊いても美味しいし、
潮汁とかもいいと思うけど…」
「聞く分にはすごく美味しそうなんだけど…
おいらが作るには
かなりハードルが高いや。
良かったら持っていかない?
刺身用もさ、持ってって、
みんなで食べてよ」
友:「いいの?嬉しいけど悪くない?」
「構わないよ!
こっちこそ忙しいのに
来てもらってありがとう。
お礼の用意もなくてごめんね?」
友:「そんなのいいって。
また食べに来てよ!
あっそうだ、渡すの忘れてた!
前に大ちゃんが『おいしい』って
誉めてくれた煮付け、
持ってきたから良かったら食べて」
「ありがとう、すごい嬉しい!」
友:「じゃ俺、店に戻るわ。
これ、遠慮なく貰っていくね!」
友だちをエントランスまで送って
部屋に戻る。
持ってきてくれたタッパーの中身を摘まむ。
「ん、うまー」
みんなにも食べてもらおうと思って
鰤と一緒に忘れないように纏める。
一息つくとさっきのニノの件が頭に浮かぶ。
頭を整理したくてアトリエに篭った。