第1章 覚醒
昔から人の嫌な部分を見てしまう事が多かった。
たまたま出かけた先でお母さんが知らない人と歩いてたり。
二つ年上のお兄ちゃんがクラスメイトからお金を巻き上げてたり。
同じクラスで憧れの存在だったあの子が他人の悪口を言っていたり。
コンビニなんかで万引きしてる人を見つけてしまったり。
そんな場面に出くわすことが何度もあった。
何度も、何度も。嫌というほど見せられてきた。
いつも見なかった事にしたかった。
でもできなくて、辛かった。
どんなに願っても、無かった事にはならなかった。
でもそろそろ、許してくれてもいいんじゃないかな。
なんで、どうして、強盗と鉢合わせなくちゃいけないんだ!
もう勘弁してよ!!
助かれば確かに貴重な体験だったなんて笑い話にできるかもしれない。
でも助かればの話だろ!?
人質なんて勘弁してよ......。
「なあ、優月大丈夫か」
一緒に出かけてて巻き込まれたお兄ちゃんが聞いてくる。
いや、いくらこういうの慣れてるからって
「大丈夫なわけないよ......」
「まあ、心配すんなって優月は俺が守るから」
お兄ちゃんがそっと微笑んだ。
いつもなら、安心出来る。
だけど、僕はその瞬間もの凄い寒気に襲われた。
嫌な予感がした。