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跡部様のクラスに魔王様(Not比喩)が転校してきました。

第4章 心までもが洗われるかのような


 既に跡部様と同学年の皆は、部活としては高等部の方の男子テニス部に所属しておいでです。中等部と同じ200人を数える部員と、10人の女子マネージャーの前で跡部様から紹介を受けた魔王は、やはり#Name10#がなければ普通の女子マネージャーに見える、とは言えぬような堂々ぶりでありました。
 帝王の紹介を受けるも、また王の名を持つ者。そう考えればもはやこの場は、氷帝学園と魔界の外交の場とすら言えるのではないでしょうか。

「今日よりまねーじゃーとして所属することとなった、魔王ディオグラディア・ベルジャナール・ゴーディスヴェインだ。気軽に魔王様とでも呼んでくれて構わぬぞ」
 教室でしたのとほぼ変わらぬ挨拶でございました。異なるのは、もはやその挨拶を受ける中に、魔王のことを知らぬ者はいないということでございましょうか。
「やっべー俺、生で魔王見るの初めてだC!」
「そら大抵そうやろ」
 あの普段は夢の中にいる方が多い芥川くんですら、目をキラキラさせて魔王に見入っているのですから。しかしすかさずツッコミを入れる忍足くんには、関西人としての意識の高さに感嘆せずにはいられません。

「具体的なことは、水戸先輩に聞いてくれ」
「みと……?」
 そう話しかけた跡部様ときょとんとする魔王の前に、すっと進み出たのはお下げ髪に眼鏡を掛けた、やはり氷帝ジャージにスコート姿の少女でございました。身長はさほど高くはございませんが、既に大人びた雰囲気を持つ彼女は高校2年生、マネージャー達を纏める立場でございます。
「チーフマネージャーの水戸路香(みとみちか)です。魔王とは伺っていますがここでは新人、一から指導させてもらいますね」
 にこりと笑顔ではございますが、眼鏡の奥の瞳は魔王を見定めるかのように据えられております――やはりテニス部の支えとして立つ女性、只者ではないということではございましょうか。
「ちーふまねーじゃー、ふむ。つまりはまねーじゃーの部隊長ということで良いか?」
「ええ。よろしくお願いしますね。ちなみに」
 くい、と眼鏡を上げて、水戸さんは魔王の目を見つめてはっきりと言い放ちました。
「部隊長より提督と言われる方が好みです」
 水戸さん、それ別のゲームです。
「成程、海軍を志しておるのか」
「ええ、18歳になったら始めようかと」
 通じているようで通じておりませんよ、水戸さん。
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