• テキストサイズ

跡部様のクラスに魔王様(Not比喩)が転校してきました。

第3章 新たなる男子テニス部マネージャー、任命!


 まぁまずこれも事件ではあったのですが、真の事件が起きたのはこれからだったのでございます。
「跡部ーちょっと相談なんだけど」
 そう言いながらカフェテリアを突っ切って来たのは、カフェテリアに集まる生徒達にとっても馴染みある姿でございました。
「お、萩之介か、どうした?」
「高等部の方の部活予算会議、出てって言われたから……あ、転校生の魔王の方ですか?」
 とてもナチュラルに魔王に声を掛けた滝くんに、皆思わず畏敬の視線を送りました。
「うむ、気軽に魔王様とでも呼ぶがよいぞ」
「あ、じゃあ魔王様、俺は滝萩之介。よろしくね!」
 流石の順応力でございます。突然のレギュラー落ちにも耐え、テニス部以外の者にすらも凄惨なる戦いの記録として伝わっている肉焼き宴の場で計測者の任を負い、巨額のテニス部予算を司る会計を務める男は一味違うと思わせる渋い働きと言えましょうか。
「うむ、苦しゅうない。して、滝萩之介よ、汝は跡部景吾と親しき者なのか?」
 ブリ大根の汁まで飲み干してから尋ねる魔王。よほど気に入ったのでございましょう。さほど気にした様子もなく、滝くんは微笑んで頷き、言ったのです。

「ああ、俺はテニス部会計だからね。そこの部長にちょっと相談があって……」
 まるで、一瞬で急速冷凍でもされてしまったかのように。
 魔王の動きが、綺麗に止まりました。
 たっぷり、10秒ほど。

「て、ててててててて、てにす……?」
 口元を引きつらせて呟く魔王の様子に、あれ、と滝くんが声を上げます。
「あれ、跡部、テニス部長だって言ってないの?」
「ああ、そうだって知らない奴に会ったのが久し振りすぎて忘れてたぜ」
 のんびりとしたムードで言葉を交わす跡部様と滝くんに対し、魔王の顔色は傍目からもわかるほど、さぁっと蒼ざめていきました。
「あ、跡部景吾、それに滝萩之介……汝らは、『てにす』を修めし者達、なのか……?」
「ん? ああ、そうだぜ?」
 怯えたような魔王の言葉に、首を傾げながら跡部様がお応えになった瞬間。

「よ、よよよ寄るなぁぁぁぁ!!」
 椅子の横に置いてあった剣を引っ掴んで椅子ごと後ずさる魔王の姿に、思わずその場にいた全員が目を丸くしました。
/ 29ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp