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跡部様のクラスに魔王様(Not比喩)が転校してきました。

第3章 新たなる男子テニス部マネージャー、任命!


「何だ? ディオグラディアはテニス、嫌いなのか?」
 そう眉を寄せた跡部様は、どこか切なげな様子で呟かれました。
「大丈夫、魔王様? 顔、蒼いよ?」
 滝くんも大変心配そうな顔で、魔王の表情を覗き込みます。
 しかし――そもそも剣を引っ掴んで剣呑な雰囲気を漂わせている魔王に対して論点はそこではないだろう、と大半の生徒達がツッコミを入れたさそうな表情をしてはおりましたが、とてもそのような勇者は――、
「その剣、銃刀法違反やないん?」
 いました。
 このような状況でも普通に日替わりB定食を食べ終えていた忍足侑士くんに、尊敬の眼差しが集まります。ただし、そこもツッコミどころではないんじゃないかなぁ、という空気が、少しだけ漂ってもいます。
「銃刀法だか柔道場だか知らぬが、とにかく『てにす』をやっている者は余に近付くな! この我が宝剣たるレギオレディスタの錆になりたくないのであれば――!」
「……部員、中等部から大学部まで合わせて600人いるぜ?」
「女子も合わせたら1000人くらい?」
「な、ななななっ……」
 元から蒼かった魔王の顔から、さらに倒れてしまいそうなほど血の気が引いていくのが、その場の誰にもわかりました。

「そもそも、なんでそんなにテニスが嫌いなんだ……」
 茫然とした様子の跡部様の口から、言葉が零れました。
 それが酷く悲痛な響きを持っていることに、気付かぬ者はおりませんでした。ええ、そう。魔王も含めて。
「……故は、言えぬ。だが……」
 魔王の蒼ざめた表情から、けれど徐々に殺気が抜けていき――仲良くなれたと思った2人の王の間に、けれどやはり魔と人は分かり合えぬのかという、重苦しい沈黙が流れ――、
「そうだ。テニスの素晴らしさを知らないからじゃねぇか?」
 ああいえ、跡部様は全然別のことを考えていらしたようでございます。
「え?」
「よし、ディオグラディア! テメェ、今日から……」
 すっとお立ちになった跡部様は、あのお馴染みのポーズで、右手を優雅に掲げ――、

 パチィン!

「男子テニス部のマネージャーだ!」
「はぁぁぁぁぁぁ!?」

 その場にいた者は、魔王の絶叫と共に聞いたということでございます。
 カフェテリアに鳴り響く、どこからともなく、けれど盛大なる氷帝コールを。
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