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跡部様のクラスに魔王様(Not比喩)が転校してきました。

第3章 新たなる男子テニス部マネージャー、任命!


 その事件が起きたのは、昼休みのことでございました。
 いえ――確かに朝から事件ではございましたが、その記憶すらうっすらと、まるで遠い昔、戦国時代にでも起きた出来事かと思えてしまうような事件が起きたのでございます。
「京都のもんにしたらな、『こないだの戦い』言うたら応仁の乱やから」
 忍足侑士くん曰くそういうことらしいのですが、ここは東京でございます。
 ついでに言いますと、忍足侑士くんの出身地は大阪でございます。

 閑話休題。
 氷帝学園では、持ち込み可能な人材としてお抱えシェフが校則で認められております。当然食材などは自ら用意する必要がございますが、お抱えシェフは氷帝学園のカフェテリアの設備を使って調理を行うことが可能となっているのです。
 その日も跡部様は勿論お抱えシェフが綿密に栄養計算を行った特製ランチを召し上がっていらっしゃいました――が、その隣で魔王が同じ食事をご馳走になっている光景は、流石にカフェテリアを訪れた生徒達の目を釘付けにしておりました。
 跡部様が誰かと共に昼食をお取りになること自体は、珍しくはございません。男子テニス部のレギュラー陣や生徒会のメンバーなどは、ミーティングがてらお昼をご馳走になることは数多くございますし、跡部様はゆっくり話したいと思った相手をランチにご招待することもしょっちゅうではございます。
 しかし――『通貨を自ら持ち歩くなど失念していた』なんて理由で跡部様にお昼ご飯をご馳走させた者は、流石にございませんでした。ついでに言いますと、それが頭部から優美に曲線を描き伸びる2本の角を隠す気もなく堂々としている人ならざる存在、魔界を統べる者、魔王であったことも初めてでございます。
 集まる視線が好奇と嫉妬、畏怖の混じった何とも言えぬものであったのは、当然と言えましょう。しかし表立っては、誰も何も言うこともなく、遠巻きに眺めているのみでございました。
 なにせ、魔王でございます。
 イオナズンとか撃たれたら死んでしまいます。
「ディオグラディア、口に合うか?」
「うむ、食べたことのない味ではあるが、余は好みであるぞ」
 例え箸を使えないがゆえに、跡部邸シェフご自慢のブリ大根をフォークでぶっ刺して食べておられようと、どんな力を持っているかもわからぬ、得体の知れぬ魔王なのでございます。
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