第23章 未来の選択【一松END】
「ごめんくださーい」
見舞いの品を持って、松野家を訪ねる。すぐに戸が開いて、トド松くんが姿を見せた。
「いらっしゃい、絵菜ちゃん!随分早かったね」
「うん、今日は仕事お休みにしてもらったの。上がらせてもらっていい?」
「もちろん。今は僕と一松兄さんだけなんだ。あ、僕は下にいるから、気にせずゆっくりしていってよ」
「ありがとう」
久しぶりの松野家。まさか、お見舞いで来ることになるとは思わなかったな。
階段を上がって、みんなの共用部屋の襖を開ける。
…彼は、眠っていた。
「一松くん…」
「すー…すー…」
ソファに寄りかかり、小さな寝息を立てている一松くん。彼の右腕には、包帯が何重にも巻かれていた。
夜、トド松くんからMINEで一松くんの無事を聞き、私はようやく安心することができた。どこの病院に行ったのかも分からなかったし、いくら連絡しても繋がらないから心配で仕方がなかったのだ。
家で安静にさせてるからお見舞いに来てよ、と言われ、私はスーパーで果物を買ってやってきたのだけれど…
気持ちよさそうに眠ってるし、起きるまで待ってようかな。
果物の入ったバスケットを床に置いて、彼の隣に座る。…寝顔、可愛い。
起きたら、彼に謝らないと。ううん、謝るだけじゃない、たくさん、ありがとうって言わなきゃ。
「すー…すー…」
「……ねぇ、一松くん」
どうしてあの時、私にキスしたの?
私を黙らせるため?それとも、落ち着かせるため?
「私は…」
どっちでもないのだとしたら…あのキスは、特別なものだって思ってもいいの?
…気付いちゃったんだよ。
「私は…一松くんのことが…」
「…近い」
「きゃああああっ!!?」
いきなりぱちっと目が開かれて、一松くんが不機嫌そうに呟く。私は驚きのあまり思い切り叫んでしまった。
「…うるさいんだけど。鼓膜が破れる」
「はぅあ!?ご、ごご、ごめんなさい!!」
「だからうるさ……はぁ、まぁいいや。何しに来たの?」
「え!?と、お、お見舞いに…」
「ふぅん…」
あ、相変わらずの塩対応!…じゃなくて!伝えたいこと、ちゃんと伝えなきゃ!