第21章 君の瞳に映るのは【カラ松END】
…逃げたい。できるものなら。
でも、形はどうであれ励まされてしまった。覚悟を決めるしかないよね…。
俯いていると、足音が近付いてきた。ゆっくりとこっちに向かってきて…
私の前で、ぴたりと止まる。
「…絵菜」
…カラ松くんの声だ。
「カラ松、くん…」
見上げる。いつもは凛々しい眉をほんの少しだけ下げて私を見つめる、彼がいた。
「なんで…こんなすぐに…」
みんなが出ていってから、入れ違いで来たかのような早さだ。一松くんは呼んでくるって言ってたはずだけど…
するとカラ松くんは、ばつが悪そうな顔をする。
「いや、なんだ…たまたま、近くを通りがかっただけというか…たまたま、君を見かけたというか…」
「…もし、かして…聞いちゃった?」
「!…す、すまない…」
否定しないんだ…じゃあ、みんなとの会話をカラ松くんに聞かれてたってこと?そんな…恥ずかしすぎる。
「わ、私、か、帰るね!」
いたたまれなくなり、先ほどまでの覚悟はどこへやらで、私は立ち上がって再び逃げ出そうとする。しかし今度は、
「待ってくれ!」
カラ松くんに呼び止められ、腕を掴まれた。
振り向き様、それ以上動けないように抱きすくめられる。
「…っあ…」
「絵菜、頼む…逃げずに、俺の話を聞いてくれ…」
…切ない声。
デートの時以来、久しぶりに触れる彼のぬくもりとその声に、胸がきゅうっと締め付けられる。
…好き。大好き。この人のことが愛しくてたまらない。
「…ごめん、なさい…」
彼に身を預けて大人しくなる。でも彼はより一層私を強く抱きしめてきた。