第20章 繋がる想いは永遠に【おそ松END】
「っあー、もうこんな時間だったのかー。早く帰らねぇとみんな心配…してるわけないか」
「あ、あの、おそ松くん…」
「ん?ああ、わりーわりー」
彼は掴んだままだった私の腕を離し、改めて私に向き直った。
「で、本当のトコは?」
まっすぐ見つめられて、今度は私の頬が熱くなる。…誤魔化したりなんてできない。
「…あの、ね。会いたかったのもあるけど、私、おそ松くんに頼みがあって」
「頼み?」
「こ、ここじゃなんだから…歩きながら、話さない?」
こんな客の出入りする場所で話したくはない。私はとりあえず人気の少ない道を選んで、彼と並んで歩き始めた。
けど、いきなり本題に入るのもなんだか違う気がして、私は他愛のない話からすることにした。
「さ、最近、どう?みんな元気?」
「そりゃーもう、元気ありまくりだな。俺もだけど。ああでも、こないだから俺たち、就活し始めたんだよね」
「え!そうなの?」
「君が頑張って仕事してるからさ、それに感化されてっつーか?いやまぁ、すげー大変だし長続きするかわかんねーけど、飽きる前には職見つけないとな!なはは」
「ふふっ、もうおそ松くんったら。頑張ってね、応援してるよ」
「おう!」
あれだけ頑なにニートを貫いていたみんなが、私に影響されて働く気になってくれただなんて…!まるで子供の成長を喜ぶ母親の気分だよ…!
胸の奥がじーんとして、感動を噛み締める。
「んじゃ、絵菜。俺になんか頼みがあるんだろ?なんでも聞くから言ってみ?」
おそ松くんに言われて我に返る。そ、そうだ、いつまでも引き延ばすわけにはいかない。
私はすぅっと息を吸って、覚悟を決めた。
「…た、単刀直入に言うね。その…あさって、私の彼氏を演じてほしいの」
「!か、彼氏…?」
「実は今日、会社の先輩に告白されて…でも私はその人のこと、恋愛対象としては見てないの。だから断ろうとしたら、彼氏はいるのって聞かれたから…つい、いるって言っちゃって…紹介しなきゃいけなくなったんだ。だから、あの、め、迷惑じゃなかったら…
「ごめん、それは無理だわ」
話を遮られ、きっぱりと断られる。…突き放すようなとても冷たい声で、先ほどまでの笑顔が、彼から消えていた。