第1章 卒業の日
「そういえば先輩」
その後家の目の前まで飛雄ちゃんに送って貰っているとふいに質問をされた。
「あの時武田先生と何話してたんですか?」
「ん?飛雄ちゃんのことだよ」
「俺...ですか?」
今日の夕方、武田先生の言葉。
「良かったでしょ?烏野高校排球部に入って」
『...どういう意味、ですか?』
武田先生がにこにこしながら答える。
「あの頃の苗字さん、いつも何か迷いがある、何か探してる、そんな顔をしてたから。でも、今は違う」
そしてこう続ける
「やっぱり、影山くんと日向くんのおかげですかね?」
私の心の中のピースが、パチリとハマる音がした。
「そうかも、しれません。やっぱり私、この部活に入って良かった」
そういって私は笑顔を浮かべる。
『飛雄ちゃんにまた会えて、本当に良かった』
家まで送ってくれた飛雄ちゃんの後ろ姿を見送る。
この背中が好きで、ずっと彼を見つめてきた。
今なら分かる。
あの頃の、王様のマントの面影はなく
彼の背中には今、大きな黒い烏の翼が見えるようだった。