第1章 卒業の日
『え!?』
思ってもみなかった言葉に吃驚して思わず声を出す。
「中学の時からずっと、先輩のことを見てました。今日で最後なんでしょう?だから...俺の気持ちだけでも伝えとこうと思って。すいません」
家、この近くですよね?それじゃ、とだけ言い残すと飛雄ちゃんは踵を返して私に背を向けた。
その背中が、ふいに烏野の、黒のユニフォームを着た姿と重なって...
『ま、待って!』
気がつけば、呼び止めていた。
ぎこちなく振り向く飛雄ちゃん、緊張しているのかすごい表情を浮かべている。
『きょ、今日で最後とか言わないで...た、確かに最初に言ったのは私なんだけど...えっと...』
自分でも言葉が上手く出てこない。今まで飛雄ちゃんのことをそんな風に見たことすらなかった。
でも、思い返せば私はいつも、彼の後ろ姿を見つめていた気がする。
『私も、ずっと...飛雄ちゃんのこと、見てた...から』
その後、お互いに言葉が出てこず黙ったまま、俯いに向かいあっていた。
「あ、あの...」
飛雄が口を開く。
「それは、OKってことで.......いいんすか?」
私は俯いたまま、黙って頷く。
「っっっっしゃ〜〜〜〜〜!!!!!」
まるで試合に勝ったあとのような声をあげて、飛雄がガッツポーズをする。
そんな飛雄を見て改めて、「あ、やっぱり好きだな」と感じてしまった。
『じゃあ、改めて...』
赤面しながらはにかむ。
『これからもよろしくね』