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ふたつ手と手

第3章 不信


お店に着くと、少しふてくされた顔のしょうちゃんが1人でビールを煽っていた。
忠義は慣れた様子でビールを2つ頼むとしょうちゃんの隣に腰掛け、同じようにしょうちゃんの前に座る。

安田「急に連絡きたから急いで来たんに大倉全然来おへんから、どうしようかと思ったやんか」

大倉「ごめんごめん(笑)ちゃんなかなか出てこんくって(苦笑)」

「イヤイヤ…残業続きだって言ってたでしょ??」

大倉「そんなこと言って、俺から逃げてたんちゃう??」

「そんなことないよ??」

安田「せやで‼そんなことするわけないやろ」

大倉「そうやって信じたいところやけど…ちゃん、俺と話しするとき慎重に言葉選んでへん??」

「そんなことないけど…」

大倉「なんか、俺が知ってるちゃんはそんな寂しい笑い方せえへんかったで??…なぁちゃんは、俺のなくなった記憶の手がかりを握ってるんちゃう??」

私もしょうちゃんもその問いかけに答えられず、微妙な空気が3人の間に流れる。

安田「大倉…」

「…確かに、たつくんのなくなった記憶を私もしょうちゃんも風月も知ってる。でも、それを全部話してしまうとたつくんがパンクしちゃうから。だからたつくんが自分の力で思い出すまで話さないって決めたの」

大倉「…俺だけ仲間外れやん」

「それは違うよ。たつくんのことを思ってなの」

安田「せやで。みんな大倉のことが大切やねん」

大倉「俺ばっかり苦しんでるやんっ‼」

「それは違う。みんな同じくらい苦しんでるの」

大倉「でも、俺の苦しみに比べたらっ‼」

「じゃあ、たつくんには私達の苦しみが分かるの??」

大倉「やったら、みんなには俺の苦しみは分からへんやろ‼」

安田「大倉っ‼」

大倉「ヤスやって、思い出されへん俺のこと見て笑ってるんやろ‼」

安田「そんなことないって。大倉、一旦落ち着こ??」

「…帰る」

大倉「はっ??逃げるんや」

「違うよ。今、たつくん冷静に話し出来ないでしょ??このままいても平行線を辿るばっかりだろうし…」

安田「せやなぁ…。大倉、今日はお開きにしよか」

大倉「……」
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