第2章 再会
2人で並んで歩く駅までの道程は思っている以上に長く、無言の時間も耐えられなくなり差し障りない話しを切り出す。
「3月って言ってもまだまだ寒いね」
大倉「せやなぁ(苦笑)この時期は手がかじかんで大変やねん」
「たつくんって、プログラミングの会社にいなかったっけ??」
大倉「そうやったって母さんに聞いてはいたけど…入院してる期間が長かったから(苦笑)」
「事故の後遺症って、記憶がないだけ??」
大倉「せやなぁ…手足はちゃんと動いてるし、大学卒業するまでの記憶はあるからなぁ…」
「普通に生活できてるのに、どうして思い出そうとしてるの??」
大倉「俺も最初はそれでいいかと思ってたんやけど…友達と話ししてるときに俺だけ記憶がないって言うのがつらかってん」
「その時のこと、何か聞いてたりするの??」
大倉「いや…そのときの話しをするとなぜかみんな言葉を濁すねん(苦笑)」
「それなら無理に思い出さなくても…」
大倉「俺もそうしようと思ったんやけど…誰かと付き合ったりするってなったときに、本能で誰かと重ねてしまってんねん…。その時に、ちゃんと大切なものを思い出さなアカンって思ってん」
「…そっかあ(苦笑)」
駅に着き最終電車のアナウンスが流れてくる。
「今日はありがとう。早く、記憶戻るといいね。じゃあね‼」
一刻も早く離れようと、改札口に向かうため足を進めようとしたところで思ってもない言葉に足を止めた。
大倉「ちゃん、待って‼」
「ん??」
大倉「連絡先教えて??」
「えっ??」
大倉「えっ…アカン??」
「そんなことないけど…」
大倉「なら、携帯‼はよせな、電車来てまうっ‼」
「う…うん」
少し強引な忠義の言葉に戸惑いながらスマホをだし、赤外線でお互いの連絡先を送り合う。
大倉「ちゃんと登録しといてや」
「分かった(笑)」
大倉「連絡するわぁ(笑)またなぁ‼」
「うん。またね」
遠くなっていく忠義の背中を見ながら、あの頃の想いが溢れだしてるのを必死に抑えてる自分に気づかないフリをした…。