第4章 君を知るには
男性がこちらに近づいてくる。あともう少し、というところで、怪物がその後ろに現れた。そして男性は飲み込まれ、次は私の番だ、と思った。
(来ないで...お願い... )
怪物はドスドスと音を立てながら、ゆっくりと距離を詰めていく。なぜ私に気付いたのだろう、眼は見えていないはずなのに。
(もう、駄目だ...)
私は怖くて目を瞑った。怪物は大きく口を開け、私を飲み込もうとした。
次の瞬間、
《ザシュッ》
切り裂かれるような音がした。目を開けると、私の前にいた怪物は真っ二つに切られていて、側には一人の男子がいた。
(え?...私、生きてる?)
「なにボサッと突っ立ってんだよ。早くどっか行け。」
「え、あ、あの...」
私とあまり変わらないくらいの年に見える。背は私より10センチは高そうだ。手には大きな鋭い鎌を持っている。怪物を倒したと思われるその鎌は、全く汚れていなかった。
「しかし、まぁよくあんなのに向って行ったよなぁ。お前、普通の人間だろ?まさか...いや、な訳ねぇか。」
「えっと、その...」
「なんだ?もしかして食われたかったのか?」
「あ、いや、そうじゃなくて、ありがとうございます!」
「あっそ。」
そっけなく返事をして、後ろを向いた。
「あ、あの...名前は?」
「どうせ二度と会わねぇんだし、言わなくてもいいだろ。」
乱暴な口調でその人は去っていった。建物を飛び越えながら。