第1章 1.悲しみの海
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「じゃ、私はそろそろ帰るね。
また明日くるよ」
木吉くんは私の頭をなでてくれた。
とっても大きくて優しい手。
私の大好きな手だ。
「ちはる、ありがとうな。
気をつけて帰れな」
こんな状態で私の心配をしてくれる。
愛されているなと実感出来る。
そんな木吉くんを私は守りたい。
ねぇ、木吉くん。
あなたをそんな目に合わせたのは誰?
心の中の疑問は口に出ていた。
彼の優しい顔が厳しい顔に変わる。
「………だめだ…。
お前に被害が及ぶかもしれない。
言ったろ? ちはるを泣かすようなこと
俺はしたくないんだ。頼むよ。」
木吉くんの肩は微かに震えていた。
私怖い顔してたかな。反省だ。
「…わかったよ。約束する。
木吉くんが嫌なことはしない。」
こういうときの木吉くんは頑固だ。
私が気にかけることで余計に心配させる。
私は病院をあとにした。