第11章 おそ松くんと5人の松野くん
ようやく作業も終盤。もう慣れっ子の作業に2人は夢中となって無言の状態が続いた。教室には紙をトントンと整えられる音や紙を折る音、他にホチキスでその折った紙を留める音しか聞こえてこなかった。しかし不意に教室以外から声が聞こえるようになる。
「ぬぉぉぉおおーーー!!!」
その声は廊下からだった。それは一瞬の出来事であり、声が救急車のサイレンのように通り過ぎていった。私は思わずその声に反応して、
「何、今の声?」
と言う。しかしおそ松くんは無言で立ち上がり、すぐさま教室のドアまで行き、廊下に向かって、
「おい、十四松!! 廊下を大声で走んな!!!」
と怒鳴りつけるように先ほど廊下で声を上げて走っていた生徒を注意していた。
(自分も大声だっつーの。てか十四松……?)
私は先ほどおそ松くんが書いてくれた六つ子一覧表を鞄から取り出す。見てみると、
【十四松(五男)→バカ、黄色】
そしてイラストにはおそ松くんが大きく口を開けているように描かれていた。
(なるほど……おそ松くんの他にもバカがいるというわけね)
私はクスッと笑いながら早く本物の十四松くんを見てみたいと思っていた。