第2章 2人の松野
「まあまあ松野。とりあえず座れ。」
担任の先生は松野くんを座らせ、
「じゃあ男子の方は松野おそ松に任せることにして……後は女子だな。やりたいやつはいないかー?」
また一声かけた。今度は女子生徒だけを対象に。しかし女子は誰も担任とは目を合わせようとしない様子が伺えた。それもそのはず、学級委員になれば面倒な仕事が多いに決まっている。簡単にやりたい人なんているわけがない。だからこそ、松野くんは凄いと感心した。そんな中、担任は、
「よし、じゃあダブル松野でやらないか?」
私はその発言に耳を疑った。
「えっ、私ですか?」
私は思わず担任に問う。
「他に誰がいるんだ? だって他にやりたいやつがいないんだしな……どうだ、松野くんの方は」
担任は先ほど決まった男子学級委員の松野くんに話を振る。
「ん……いないならいいんじゃないんですかね。なんか楽しそうだし」
松野くんは少し嬉しそうなトーンで話していた。
「じゃあ他に異論とかないならそうするが……みんなはどう思う?」
クラスはまだ慣れない教室なのか無言のままであった。が、場の空気を変えたのは松野くんだった。なんと彼は急に拍手をし出したのである。そして、
「ほらほら、松野ちゃんでいい人は拍手しようよ。そっちの方が分かりやすいでしょ?」
と言う。それにつられてかクラスのほとんどの人はぼちぼち拍手をし出した。拍手が鳴り止むと、松野くんは私の方へ来て笑顔で握手を求める手を差し出して一言。
「じゃあよろしくね、松野ちゃん」
私はもう後には引けないと思い、
「こちらこそ……」
と言ってから松野くんの手を握った。けど、
(結局、私の意見は無視ですか……)
と内心思っていた。こうして私は無理やり松野くんと学級委員をやることになった。