第11章 おそ松くんと5人の松野くん
作業は前と同じように始めた。今回はあまりおそ松くんの集中力が途切れることはなかった。しかしここで、
「ねぇ、おそ松くん」
私は声をかけた。
「んっ?」
おそ松くんは反応する。そして、
「いや……前に話してたことなんだけどね、六つ子って大変って言ってたじゃん。やっぱみんな性格って違うのかなって気になって……」
私はとにかくまだおそ松くんたち六つ子のことを知らなさすぎる。別に知って得するわけでもないが。やはり前に女の子との会話のことがあったので聞いてみることにした。
「えっ、なになに? 俺今日めっちゃ頑張ってたのに松野ちゃんから質問とか珍しー」
おそ松くんはニヤニヤしながら言う。しかしその後すぐに、
「んー……性格ね……まあ違うっちゃあ違うよ。そうだ、鞄の色とかで覚えるといいよ」
(鞄の色?)
私はおそ松くんの鞄を見た。色は赤であった。前に会ったチョロ松くんの色は……忘れてしまった。おそ松くんは続けるように、
「後松野ちゃん、紙とペン持ってない?」
「あるけど……」
と私は言い、言われた通り鞄の中からルーズリーフを1枚と筆箱からペンを取り出して渡した。
(借りるってことは……やっぱあの鞄の中には何も入ってないのかな……?)
私はこの数分でおそ松くんに対して数々の疑問を抱えた。