第14章 門出の日@黛千尋
青い空、白い雲。
快い晴天で迎えた今日の日は、洛山高校の卒業式が行われた。この屋上に来られるのも最後になるんだな、なんてセンチメタルな気分になりながら、黛は柵に身を預けた。
式も終わった校庭では、卒業生同士で写真大会のようになっていた。上からの眺めは、数が多くて『人がゴミのようだ』と呟くのには相応しい有様だった。
——これでもう、あいつとは会えない。
黛はふぅ、と息をついた。
妙な関係であった。面倒だと思いつつも、その日課を楽しみに屋上へ赴く自分がいたのも事実だった。
黛はよく分からなかった。このなんとも言えない焦燥感、会える事の喜び、そしてこれからそれが叶わなくなる寂しさ。……この気持ちが恋だとは認めたくもないし気づきたくもないが、美心に何らかの特別な気持ちを抱いているのも確かだった。
…もし、今会えたら何と言おうか。
『また会おう』?
『元気でな』?
…いや、違う。
それらの言葉は、黛の脳内で勝手に削除された。
今の黛が伝えたいのは、そんな事じゃない。もっと、何か特別な言葉だ。
黛は彼女の顔を思い浮かべる。
もし、目の前に美心が居たら、俺は何と言うだろう。
「黛さあぁぁぁぁぁん!!!」