第14章 門出の日@黛千尋
黛はいつもの通りため息をつき、いつも通りに切り返す。
「その呼び方は止めろよ。
それと、昼休みが始まったのはたった今だろ。いつからそこに居たんだよ」
授業が終わらない内に教室を出なければ、黛より先に屋上に着く事は出来ない。
「ふふ、授業は真面目に受けて来ましたよ」
「…あっそ」
美心は、今日は暖かくていいですね、なんて呑気に呟いて再び目で活字を追い始めた。
黛はそれをちらりと確認すると、やはり美心が読んでいたラノベは拝読済みだった。
「おい、その主人公が最終的にどうなるか教えてやろうか」
「結構ですー!今イイ所なんですから…」
黛はクスッと笑い、美心の背に回って膝立ちした。美心はその気配を察し、“それら”を用意する。
櫛とゴム。
黛はその2つを受け取り、早速その櫛で髪を梳かし始めた。
そう。日課とは、美心のヘアメイクである。