第12章 止まない雨@高尾和成
高尾は時々思う。
美心がこの世に存在しなければ、こんな胸の痛みを味わなくて済んだのに、と。
だが、すぐに思い直す。美心が居なければ、こんな甘く楽しい毎日を知ることは出来なかったんだ、と。
例えば、朝。校門前で彼女の背中を見つけただけで、その日1日がいい事だらけになりそうだ、なんて思ったり。
他の男と話す彼女を見て、あの笑顔が俺だけに向けられればいいのに、なんて思ったり。
もしつき合えたら。もし触れる事が出来るなら。この不治の病を、共に背負ってくれるなら。そうしたらどんなに幸せだろうか、なんて思ったり。
喜びも辛さも、どちらも恋が持つ別々の表情だ。嬉しくて胸をときめかせるのも、悲しくて胸を痛めるのも、どちらも恋に違いない。
俺のこんな想い、君は知ってるかい…?
「——はぁ、いつまで降るんだろ。早く帰りたい…」
「ねぇ、美心ちゃん」
…テストしようか。
君が俺の気持ちをどれだけ知ってるのか、のテスト。
大丈夫大丈夫!君なら意味は分かるはずだよ…?