第12章 止まない雨@高尾和成
「何?」
高尾は美心の瞳を捉え、フッと微笑んだ。
美心は少し顔を赤らめ、目を逸らした。
高尾は雲に覆われた空を見上げ、こう告げた。
「…雨、止みませんね」
——時が止まったような気がした。
普通に聞けば、なんて事ない会話の一部だ。だが、これには別の意味がある。
テスト、という名の告白だ。『もう少し、傍に居ていいですか?』なんてちょっとキザだが、丁度いい。国語だかの授業でちょっとやったし、美心は知っているはずだ。
「高尾、それ………」
美心は今度こそ真っ赤になった。彼の真剣な瞳から目を離すことが出来なかった。
ザー……
「好きだよ、美心ちゃん」
そう、これは特殊な病。
恋と云う名の、不治の煩(わずら)い。
「…っ…バカ尾……」
雨はまだ、止みそうにない。
fin