第12章 止まない雨@高尾和成
高尾は覚悟を決めた。昇降口で靴を履き替え、鞄を頭の上に乗せる。
…これで濡れないだろ。
いざ、出発——
「…高尾?」
美しく、澄んだ声。
踏み出そうとした足を止めて振り返ると、そこには高尾の想像した通りの人物がいた。
「あれ、美心ちゃん」
声の主は、同じクラスの桐谷美心だった。
彼女も靴を履き替え、高尾の隣へやって来る。
「はー、委員会の仕事を手伝わされちゃってさ。
…高尾は?」
「俺は日直。んで、日誌提出したついでに先生にこき使われた」
「ぷっ、奇遇だね!」
何気ない会話だ。…それでも、緊張と歓喜で心臓がドキドキと鳴り止まない。
——そう、これは特殊な病。
高尾は、このクラスメイトに恋をしている。