第12章 止まない雨@高尾和成
ツー……窓ガラスを指でなぞると、透明な道が出来た。他の窓でも同じ現象が起こったので、どうやら結露しているようだった。
日直日誌を提出して職員室を後にした高尾は、空気が冷たく潤っている事に気がついた。
こんな時の学校は、どこか独特の雰囲気を纏っている。
…つまり、今がどんな状況か、外を見なくても理解させられるという事だ。
「うっわ、マジかよ…」
ザーザーという音。…外は土砂降りだった。飽きもせず降り続ける雨を見て、高尾はため息を漏らした。
今日は珍しく晴れると聞いていたので、傘を持って来なかったのだ。これでは雨に濡れてしまう。
壁に掛かった時計に目を遣ると、さっき見た所から結構時間が経っていた。
彼の相棒である緑間は、高尾を置いて先に帰ってしまった。おまけに今はテスト期間なので、どの部活も基本的に休みだった。
つまり、今残っているのは高尾くらいのもので、傘を借りられる人物は残っていない。
「…走るっきゃないな」