第18章 繋いで@降旗光樹
あの日から数日が経過した。
「お待たせ、降旗くん!」
待ち合わせ場所の公園に着くと、既に降籏はベンチに座っていた。
「全然大丈夫だよ」
降旗は緊張しているのか、頬が少し赤い。
告白したあの日よりは、きっと度胸は付いていると思う……彼はそう感じていた。だが、告白の返事をもらう日に、緊張するなと言う方がおかしいだろう。
「まずは、優勝おめでとう」
「うん、ありがとう。もちろん、俺だけの力じゃないけどね。最後は黒子のパスを受け取った火神が決勝打だし、先輩達の力がなきゃ俺だって出られなかっただろうし」
照れ笑いする降旗に、美心もつられて笑顔になる。
「そうやってさりげなく人を立てられるところ、素敵だと思う」
「え?いや、当たり前の事だし…」
頭を掻く降旗に、美心は言う。
「当たり前の事を当たり前に出来るのが魅力。
だけど、もう少し自己主張してもいいんじゃない?
…今は、特に」
…スッと、彼の顔が引き締まる。
そこに、入学式のあの日のように不審な挙動は無かった。
少しの自信と、少しの勇気。
バスケで身に付けた大切なもの。
彼の成長の証だ。
「じゃあ、…そうしてみる。
俺、1番になったよ」
あまり試合に出る事はなく、いつもTシャツでベンチに座っていた。選手にタオルやドリンクを渡したり、声を振り絞ってひたすら応援するのが仕事だったと思える程に、彼の試合の出場回数は少ない。
諦めて退部する事も出来た。だが、彼は諦めなかった。12番のユニフォームを大切に所持し、いつかそれを着用して中に入れると信じて、日々練習に励んでいた。
「これで、約束果たせるかな…?」
その結果が、“日本一”。
「…充分すぎだよ」
栗色の髪。特徴的な三白眼。決して高くはない背丈。紳士な性格。
…そんなあなたが、あのボールをシュートする姿。
カッコよすぎて、涙が出そうだった。
…なんて、恥ずかしくて言えないけどね。