第18章 繋いで@降旗光樹
それから、彼がバスケ部に入部したと聞き、美心は時々応援に駆けつけた。
降旗はベンチで終わる試合が多かった。だが、試合中は仲間を励ます声や野次を飛ばし、休憩に入るとドリンクの用意をし、チームが勝てば仲間と喜んだ。
『試合に出てないのに、君はどうしてあんなに楽しそうに、嬉しそうにしているの?』
不思議でならなかった美心は、ある日の帰り道にそう質問した事がある。
降旗はその時、当たり前だよ、と返した。
『試合に出られないのは悔しいよ。だから練習するし、スタメンに入れたらいいなって思って、こうして部に残ってる。
それでも出られないのは、やっぱり俺以上に練習して、やっぱり俺以上に力のあるチームメイトがいるからなんだ。
俺はそんな先輩達や黒子や火神を尊敬してるし、何より誠凛(みんな)で試合に勝ちたいんだ。だから応援する。それでチームが、勝てたなら、ベンチも嬉しいから』
『自分が試合に出ていなくても?』
『勿論』
彼はそう言い切り、笑った。
それは、美心がいつも観客席から見ていた笑顔そのものだった。
その頃から彼を知り、美心はその姿に惹かれていった。
——そして、WCの洛山戦、降旗も出場したこの試合にチームは勝利し、誠凛は見事優勝を決め、日本一になったのだった。