第18章 繋いで@降旗光樹
『三白眼のチワワ君』。
美心の前に現れた彼の第一印象はそれだった。
始まりは入学式の日。美心は、チワワこと降旗光樹から『ひっ、一目惚れしました!』と震えながらの告白を受けた。
真っ赤な顔で、、上手く回っていない舌で愛を叫んだ彼は、走ってきたのかハアハアと息を切らしていた。
美心は返事に迷った。何しろ初対面だ。
やはり、よく知らないのに付き合うのはおかしいし、失礼だろう。そう思い、断ろうとした。
だが、美心の中である漫画のワンシーンが頭をかすめた。
少々パニックになっていた美心は、それ咄嗟に口に出してしまう。
『君が何かで1番になれたら付き合ってもいいよ!』
…あ。
『うん…分かった!』
やってしまった…。
よく考えずに口に出す癖が出てしまい、遠ざかる彼の姿を見送りながら美心その場に突っ立っていた。
…だが、やってしまった事は取り返せない。美心はすぐに開き直り、彼が何で1番になってくれるか待つだけにした。
あまり期待はしていない。急に1番になれ、だなんて難しいだろう。
つまり、彼と付き合う事など全く考えていなかったのである。