第16章 4月1日の罠@緑間真太郎
「で、何の用?」
すっかり目の覚めた美心は、早朝の冷たくも清々しい空気に爽快感を覚えた。
たまには、早起きもいいかもしれない。
起こしてくれた緑間に感謝だな。
当の緑間は何やらいつもと違う雰囲気だった。
あまり落ち着きがない。口を開いては閉じ、また口を開いては閉じる……これを繰り返しており、中々要件を言い出さなかった。
恥ずかしさからか緊張からか、少々頬が赤い。
「言いにくい事?」
「まぁ…そうだな」
「…そ」
言いにくくて、あの緑間も赤くなっちゃうくらい恥ずかしい事、か…。
何だろう。
うーん、と考えていると、
「美心」
「ん?何……え?」
まともに名前を呼ばれたのは、もしかしたら初めてかもしれない。
いつもは『お前』だなんて呼ばれているし、話す時も高尾を挟んで会話する事が多い。なので、きちんと目を合わせて話しをする事は少なかった。
それがいきなり、しかも下の名前で呼ばれた事に驚きながらも、美心は嬉しさを隠して続きを待った。