第16章 4月1日の罠@緑間真太郎
家は静かで、両親はまだ起きていない様だった。美心は出来るだけ静かに階段を降り、靴を履いて玄関を出た。
「お待たせ!
おはよ、緑間」
緑間は眼鏡を直し、まだ寝癖の残っている美心の頭を見て呆れた様に言った。
「起きるのが遅いのだよ。
まさか春休み中ずっとそんなだったのか?」
「今6時だよ⁉︎私はただの文化部だし、休み中にわざわざ早起きなんてしたくない!」
緑間は、いつもの様にため息をつく。
「これだからお前は駄目なのだよ」
「何がよ!
ってか、緑間こそ何の用?私の安眠の邪魔してまで呼び出しなんて」
そう問うと、緑間は少しギクッとしたが冷静に返された。
「ロードワーク中にたまたま通りかかっただけなのだよ。
それに、俺は呼び出した覚えはない。そっちが勝手に来ただけなのだよ」
「え、酷い!」
「強いて言うなら、少し話したい事が有るくらいだな」
話したい事…?
「まぁ、取り敢えず座ろっか」
緑間はそれに賛成し、美心の案内で彼女の家の前の段差に腰を下ろした。