第15章 いつもの日に愛をひと粒@縁下力
——しばらくそうしていると、美心は段々眠気が差してきた。
初冬とはいえ、夕方は特に冷える。
ちからの肩は居心地がいいなぁ、なんて改めて思いながら、当の縁下に腕を絡ませて寒さを和らげた。
縁下はまた頬を緩ませ、小さく「美心」と呼び掛けた。
「何ぃ、ちから?」
縁下がコンコンと底を叩きながら、「コーン取れそうだよ」と告げると、美心は「えー、なんでそんな早いの…」と缶を奪い返そうとした。
だが、『待て』の手を出され、それは叶わなかった。
私は犬か、なんて思っていると、縁下がコーンを口に含み始めた。
「ちょっ、私のコーン!!」
縁下の傾けた缶を今度こそ取ろうと腕を伸ばした。
すると、その手は掴まてしまった。
——ハッ、と気づけば、
目の前には彼の顔。
右腕を掴む大きな手、少し色めいた彼の瞳、…顎を人差し指でクイっと顔を向けさせられ、心臓が急速に鼓動を早めた。
「ちか……」
……開いた口に、コーンがひと粒。
次の瞬間、2人の唇が重なった。
火照った頬を、身体を、冬の北風が優しく撫でてゆく。
…それでも、美心の熱は引かなかい。
縁下は、美心がコーンを飲み込んでも尚、唇を離さなかった。寧ろ、深く深く口づけてゆく。
ギュッと目を瞑った。
腕を掴まれたあの瞬間の、彼の瞳が脳裏に浮かぶ。
…あれは、求めている時の眼だ。
「美心…」