第15章 いつもの日に愛をひと粒@縁下力
哲学的な思考を持つ美心と、客観的で少々冷めているところがある縁下。タイプは違うが、互いの思考から考えを学ぶ事が出来ている。
いい出逢いをしたなぁ、なんて柄にもない事を考え、縁下はコーヒーの缶を横に置いた。
…すると、
「……ねぇ」
…スッ
「こういう時は…?」
差し出された缶を持つ左手に自分の手を被せ、縁下は諭すように言った。
美心は口を尖らせながらも、渋々言い直した。
「…コーン、取ってください」
「よく出来ました」
縁下は缶を受け取り、早速作業を始めた。
両手の空いた美心は、「私の方が年上なのに、なんで敬語を……」と愚痴を零している。
仕方なく片手を空けて宥めるように髪を梳くと、美心はどこか安心したような表情になり、彼の肩に身を預けた。
“幸せ”って、こういう日常を云うんだなぁ…。
美心はそう思い、フッと目を瞑った。