第1章 交換条件
「うわ~…先生いいとこ住んでんじゃん」
「新築なだけで中は2LDKで割と狭いけどね」
「ふーん。」
「松野くん、送ってくれてありがとう」
「明日は7時30頃迎えに来るわ」
「ちょ、話聞いてたかな…。
生徒と先生は特別な「あ。はい、コレあげる」
私の言葉をさえぎってあるものが手渡された。
赤色の…防犯ブザー?
「…?」
「何かあったらここひっぱって鳴らして。すぐ行く。」
「もう、大丈夫だってば…けど、ありがとうね」
「じゃーね、おやすみ!」
「おやすみ、気をつけて帰ってね」
お互いに手を振って松野くんは家へ、
私は自分の部屋へと足を進めた。
防犯ブザー…いつの間にこんなの用意してたのかな?
そんなことを考えながら自分の部屋の階についた。
「おかえり。」
「…!!?」
私の部屋の前にはいるはずのない人物、
松田先生の姿があった。
「どうして…松田先生がここに…?」
「いや、答えがはやく聞きたくてね。考えてくれたか?」
私は怖くなって階段の方向に走ろうとした。
「きゃっ?!」
こんな時に限って足がもつれて転んでしまった。
後ろから松田先生の足音が近づいてくるのが解る。
「どうした急に走り出して?…部屋で話さないか?」
「ひっ…!!」
手首をがしっと掴まれて逃げられそうにない。
まだそう時間も経っていないし叫べば松野くんが
助けに来てくれるかもしれない。
そう思い、声を出そうとしても声が震えて
呼吸が乱れてうまく声がでない。
「っ、痛っ…!!」
私が抵抗すればするほど松田先生の
手をつかむ力が強くなる。
『カシャッ』
ポケットから音を立ててこぼれたのは
さっき松野くんから貰った防犯ブザー。
これなら助けを呼べるかもしれない…!
思い切りひもを引っ張ると勢いよくブザーが鳴り響く。
「?!!、は、早く止めろ!!!」
「やっ…松野く、んっ…!」
「松野?あの不良が助けに来るわけないだろうが!」
早くそれをとめろと両肩を掴まれて揺さぶられて
頭がくらくらして意識が遠のくのを感じる。
遠のく意識の中で松野くんの「先生!!」と
心配そうに叫ぶ声が聞こえた気がした。