第1章 交換条件
「…実はね、ずっと前から付きまとわれてて…。」
先生はぽつりぽつりと、今さっきの事、今までのことを話してくれた。
要するにストーカー被害にあっているらしい。盗撮をされたり、日中構わず大量のメール。
今さっきは写真に写っている男は誰だと問い詰められていた所だという。
相手はただの学生時代の幼馴染。
「俺、正直言うと先生とあいつができてんのかと思って内心すっごい焦った。」
「できてるって…私、彼氏なんてできたことないよ?」
そう言って先生はふふっと笑った。
俺はさっきの一瞬本気であいつに嫉妬したのが馬鹿らしくなった。
「先生可愛いし抜けてるとこあるし、なんかすっげー心配」
「私よりも松野くんのが心配だよ!」
「俺?」
「いつも喧嘩して傷つくってるんだもん…。」
目線を下に逸らして悲しそうな顔をする先生。
俺の事心配してくれてんだって思ったら
なんか嬉しくてにやけそう。
「ねぇ、先生、俺今日から毎日先生のこと送り迎えするわ」
「え?」
「先生歩きじゃん?夜道とか危ねーしさ」
「だめよ、松野くんに迷惑掛けちゃうし…
夜道が危ないのは松野くんも同じでしょ?」
「俺、男だよ?兄弟の中で一番強いし。」
「だめったらだーめっ。ほら、もうすぐ授業始まっちゃうよ?」
時計の針は始業の一分前をさしている。
先生は俺の事いつも子供扱いしてくるけど、
もう高校生だしそれなりに大人なつもりだし。
…先生から見て俺って恋愛対象に入ってないのかな。
「…4歳しか違わねーし。」
「?」
そんな独り言をつぶやいて保健室を後にした。
教室に戻ると兄弟の中で唯一の同じクラスであるカラ松が「また保健室か?」と冷やかしてきた。なんかむかつく。