第5章 すれ違い
「抱きしめてごめんなさい…!」
「先生…?」
「彼女がいるって解ってるのにこんなこと…」
「は?…え、ちょ、先生?」
先生の表情は見えない。困ったような涙声だった。
「ちょっと待った!彼女いるってどゆこと?」
「え…?お昼、教室でトド松君達が…」
「あー、あれは彼女が出来たんだろって疑われて先生との事バレたらまずいし、彼女居る事にしてて。」
「じゃあ、さっき食べてたお弁当は…?」
「あれはお昼アイツらに捕まってて食べに行けなくて勉強教えてくれる奴がくれただけ。」
なんだ、先生のあの変な態度は俺が全部勘違いさせてたからで、泣かせたのも俺で、嫉妬してくれた訳で、今、こうして抱きしめられてる訳で、
「先生、もしかして…俺のこと、」
そこまで言うと俺を抱きしめる先生の手の力が増した。
これって好きって事だよね…?
つまり先生と俺は両想い?
嬉しくて俺も華奢で力を入れたら
壊れてしまいそうな先生を優しく抱きしめた。
その後はマンションまで手を繋いで明日のお弁当の話なんてしながら向かった。
まるでカップルみたいで、幸せだった。
『♪』
帰り道、着信音で携帯を見てみると先生から
メールが届いていた。
『気をつけてね。おやすみなさい。』
その短文だけで俺は嬉しくてガッツポーズをして先生のアドレスを新規に追加した。
俺はホクホクとした気持ちでその夜はなかなか眠れなかった。