第5章 すれ違い
その日の放課後、松野くんは予定通り保健室には来なかった。
教室で勉強するって言ってたからここに来ないのは解ってたけど、もしかしたら来てくれるんじゃないかって…。
さっきはあんな嫌な態度とっちゃったし…謝りたい。
今日は仕事も早く終わった。戸締りを終えて足早に松野くんの教室へ向かった。
「…松野くん?」
そこには松野くんと女子生徒の姿があった。
思わず教室の扉にかけた手をそっと下ろした。
「いや~マジで助かるわ!本当にありがとね!」
「いいって、いいって。…てか、よく食べるね。」
松野くんはお弁当を食べていた。
…それはたぶん、あの子の作ったお弁当。
私の作るお弁当とは違って色鮮やかで、
可愛いたこさんウィンナーにハート形の卵焼き…。
溢れる涙を抑えられず、急いで階段を駆け降りた。
『ドンっ!!』
「きゃっ…!?」
「せ、先生!怪我はないか?!」
泣きながら階段をかけ下りたせいで前がよく見えず、
階段を上がってきたカラ松くんとぶつかってしまった。
「!!!、ど、どこか痛いのか?!」
「だ、だいじょうぶ…だよっ…私、ごめんねっ」
「せ、先生!!!」
私の肩をつかむカラ松くんの手を振りほどいてその場を逃げるように階段を下りた。