第5章 すれ違い
「失礼しまーす!!」
「あ、十四松くん、どうしたの?」
「体育でふざけて転んだだけ。一応消毒してくんない?」
質問に答えたのは十四松くんではなく、
その後から入ってきた松野くんだった。
「!!…十四松くん、膝洗うね。」
「うん!」
なんとなく視線をそらしてしまった。
今は…なんというか、松野くんと目を合わせたくない。
十四松くんを椅子に座らせてペットボトルの水で
傷口を洗い流す。出血はしているけど、傷は浅いみたい。
その様子を一歩下がったところでじっと松野くんが見ている。
「傷は浅いけど、まだ出血もあるしばんそうこう張っておくね。」
「先生、ありがとうござい…マッスルマッスル!!ハッスルハッスルー!!!」
「やめろって十四松!」
松野くんが保健室から追い出すように十四松くんの背中を押す。十四松くんを背に、松野くんはくるっと振り返った。
「先生、朝ごめ…」
「あの!!!」
「え?」
「私、知ってるから…!気にしなくていいから…!」
「えっと…どゆこと?」
「…さよなら!」
思わず松野くんの言葉を遮って保健室から追い出してしまった。
「…なにやってるんだろう…私…。」