第5章 すれ違い
「おそ松兄さん!」
トド松くんの声が松野くんの教室から廊下にいる私のところに聞えた。
「いつかいつかって…いつ教えてくれる気?」
「おい早く離せよトド松、俺用事あるってば!」
「彼女のところか?」
「っ、だから…」
教室を窓からのぞくと、トド松くんが松野くんの腕をつかみ、カラ松くんが反対側から肩を組んで逃げられないようにしている。
「血を分けた兄弟の間に隠し事はなしだろ?ブラザー」
「おい、お前らしつこいぞ!!もうお昼終わっちゃうだろーが!」
「話逸らすなー!!彼女教えろー!!」
3人の会話を思わず立ち聞きしてしまった。
「彼女…?」
松野くん…彼女、いたんだ…。
その場で固まってしまった私はチャイムの音でやっと我に返り保健室に小走りで帰った。
「…」
仕事に向き合わなくちゃいけないのに、
頭が混乱して仕事に手がつかない。
もしかして、最近冷たい気がしたのも、朝来てくれなかったのも、放課後ここに来ないのも、彼女ができたから…?
今まで感じたことのない焦りを感じた。