第3章 コーヒー
「わーすっげー女の子の香りがするー!」
「えっ…。」
部屋にあがるなり予想外の発言で顔が引きつる。
「と、とりあえずそこで待ってて?」
「おじゃましまーす」
リビングのソファを指差せば松野くんは遠慮なく座ると
テーブルの上にあったリモコンを操作してテレビをつける。
飲み物でも出してから急いでご飯を作ろう。
「松野くん、何飲む?コーヒーとりんごジュースとお茶しかないけど…あとお水とか。」
「…先生は何飲むの?」
「私はコーヒーにしようかな。」
「じゃあ俺もコーヒー。」
松野くんコーヒーなんて飲めるのかな?
お昼休みはいつも自販機のりんごジュースだけど…。
そんな事を考えながら慣れた手つきでコーヒーをいれる。
もしかして私に合わせて無理してるんじゃないかな…
一応スティックシュガーを乗せておいた。
「はい、どうぞ。」
「それ、先生の?」
「え?あ、私はブラックで大丈夫だから、松野くん良かった使ってね。」
「…俺もブラックでいいし。」
あ…やっぱり無理させちゃってるのかも。
私の分のお砂糖も持ってくればよかった。
私はどうも心配で自分のコーヒーを飲みながら松野くんの様子を眺めていた。