第2章 お弁当
「あ~…先生と結婚したら毎日こんな
うまいの食べれるんだろなぁー…」
「そんな大げさな…。」
「よし、決めた。俺先生と結婚する!」
「付き合ってもないのに、何言ってるの?」
予測不可能な言動で私はいつも笑ってしまう。
松野くんと結婚する人はきっといくつになっても
飽きるどころか毎日がすごく楽しいんだろうなぁ。
「じゃあ、俺と付き合ってよ。」
「!…か、からかわないで」
「俺、真剣なんだけど?」
「…っ」
いつもふざけてるくせに真面目な顔で
私の目を真っすぐ見つめてそんな事を言ってくる。
顔が熱くなるのを感じて視線を思わず下げる。
「…。まあ、考えといて!」
そう言うと松野くんはまたお弁当を食べ始めた。
結局今のは何だったの?からかわれただけ?
だけど考えといてって…。
「それ、先生の?」
デスクに置かれている私のスマホを指している。
「うん?」
「ふーん、ちょっと貸して」
「えっ、ちょっ、勝手に…」
私のスマホを持つと私の伸ばした手を交わし
「げっ、ロックかけてないの?不用心だよ先生~」
なんて言いながらなにやら操作している。
操作を終えると「ほい」と言ってあっさり返してくれた。
「?」
「俺の番号入れといたから、なんかあったらかけてよ。」
スマホを確認すると確かに電話帳には
『おそ松』と加えられている。
「あんまり遠いと聞えないじゃん?防犯ブザー。」
「…!」
「じゃあまた後でね。ごちそーさまー」
手を振って保健室を出ていく松野くんの背中に
「ありがとう!!」とお礼を言った。
何も考えてないように見えて
誰よりも松野くんは細かい気遣いをしてくれている。
電話帳の『おそ松』の文字を見て笑いがこぼれた。