第1章 実渕玲央の双子の話
「この前の休みにさ、れおねー見かけたんだけど!」
それは、部活が始まる前。
今から着替えに行こうと体育館へ集まっていた時だった。
葉山の一言から始まった。
「私を見かけるなんて、当たり前でしょ」
「いや、れおねーなんだけど、れおねーじゃない!」
「どういうことよ」
なんだなんだと、チームメイトが集まる中、キャプテンである赤司と、実渕の幼馴染でもあるマネージャーのは練習メニューについて確認しているのを横目に、ワイワイと盛り上がりを見せた。
「なんて言うか…
おっかないれおねーって感じ」
「意味わかんないわ」
「あー、それなら俺も見たな。
声を掛けたら、睨まれた挙句にオカマと一緒にすんな!って怒鳴られたんだが」
「そう!
同じこと言われてさ!!
あれ、れおねーじゃないなら誰だよ」
次々と出てくる証言に、実渕は冷や汗をかきだした。
笑って過ごしてはいるが、いつまでも誤魔化せるわけがないのに。
「やーねー。
他人じゃないの?」
「でもあいつらの証言が本当だとすると、他人の線はないだろ。
オカマと一緒にすんな。
実渕のことを知ってる人物じゃないと、答えれないはずだろ?」
黛からの言葉に、実渕は心の中で思いっきりため息をついた。
頭が馬鹿な2人だけだと、人違いで済ませたというのに。
こういったことで、頭の回転が回る黛や赤司がいると深く聞かれることはわかっていたはずなのに。
「れおねーが答えてくんないのなら、に聞けばいいじゃん!」
名案という感じに、手を叩いた葉山は赤司のそばにいたのそばへと走って行った。
「ちょっと!!
待ちなさい!!」
別に隠していたわけじゃないが、今更だ。
追いかけて、葉山の行動を止めようとしたが、既に遅く、彼はへ問いかけをしていた。