第5章 伝える
部活が終わり、片付けをしてるころ、飛雄が近づいてきて、話しかけてきた。
「おい宇月、今大丈夫か?」
「うん。大丈夫だよ。どうした?」
「好きだ」
凄くシンプルだった。
先輩たちは俺達に気にとめてないみたいだし、体育館が騒がしかったから声も聞こえて無かったみたいだけど。
そんなことは別に問題じゃなかった。
逆に聞こえていた方が流せたかもしれない。
でも、誰も聞いてない。飛雄のまっすぐ見る目。茶化すなんて、できなかった。
「…嘘なら取り消して」
「嘘じゃねーよ。本気だ」
「…どうして今なの?」
「お前の事で悩んで試合でミスするくらいなら伝えた方が良いと思った」
嗚呼、そういう考えか。
いや、違うか。俺がわかってなかった。
飛雄は悩むのが嫌いだから、思ったらすぐに言った。それが裏目に出て中学の時は失敗したけど、今は違う。今じゃ、素直に言葉に出すことでいい事もあった。
なにより、俺自身がそんな飛雄の性格が好きだった。
「返事、聞かせてくれよ」
「…飛雄のことは嫌いじゃない。でも、恋愛感情じゃない」
「そうか。悪かったな」
あれ、案外あっさり引いた…。
もっと渋るもんだと…いや飛雄はそんな性格じゃないな。
でも、飛雄は納得出来たのかな?