第1章 月曜日
「別にいいだろ、髭があったって怪力だってM納豆だってチャイナ娘だってよ。かえってパンチきいてていいくれぇなモンだ」
「残飯ばっか食ってるうちに普通の飯が食えなくなっちゃったみたいな事言ってますよ、このぐるぐるほっぺのハットリくんは。お母さんの味を忘れちゃったか?美味しい肉じゃがにトローッとアングレーズソースなんかかけてナイフとフォークで頂いちゃうみたいな、そんなんお前お母さんすげぇ形相で殴りかかってくるよ?悪食で家庭崩壊だよ。あーあー、親不孝だね、ひどいよ。親の肉じゃが子アングレーズだよ」
「ああ?何言ってんだテメエ。何なんだ、アング何とかってのは?」
「何ってお前、トローッとしてんだよ。トローッと。何かホラ、何て言うの?トローッとした黄色で、トローッとした味で、かけるとトローッとして、食うとトローッてなんだよ。とてつもねぇトローッなんだよ。鼻水もリスペクトしちゃってっからね、あのトローッ。そういうアングレーズなんだよ、あいつは」
「あいつってどいつだよ。テメエの幼馴染みか何かなのか、そのアング何とかってのは。言っとくけどな、気持ち悪ぃって事以外さっぱり何にも伝わって来てねえぞ。お前の日本語最低だな。どこの国の出身なのよモジャモジャ。たく、鼻水ってお前、悪食はどっちだってんだ」
「誰が鼻水食うって言いましたかァ?ぅお"え・・・バカ、気持ち悪くなってきちまっただろ?ぅぶ・・・」
「止めろバカ、あっち行け。クセーんだよキタネーんだよウルセーんだよ、俺ァもうジャンプ買って帰りてんだよ、おい、ヒゲ子、警察呼んでく・・・・ぅごわッ」
「おいおい、そっちは車走ってっから危ねえぞ、ぅぶェ、ハットリくーん?・・・アダッ、あれ?」
全蔵が、僅かな間をおいて銀時が、尻を蹴り飛ばされて車道に舞った。
二人を蹴り上げた左足を今まさに振り下ろしたヒゲ美人の姿が逆さまの視界の中で目を引く。
「あ、赤パンだ・・・・」
プァーン
ドカドカーン
「・・・・あ、赤パン・・・・・・・・」
「・・・し、死ね。この・・・クソゲロやろぅ・・・・」
救急車がサイレンのドップラー現象をおこしながら二人を回収に来る頃には、ヒゲ子の姿はとっくに書店に消えていた。