第2章 火曜日
「今の口ぶりじゃ聞いても無駄そうだけどな、アンタ、河合の居所ァ知らねえか?アイツが出て来てくれりゃ足癖の悪ィお姫さんも説得し易くなるんだが」
スリッパを履き直しながら問う土方に全蔵は口をへの字にする。
「知る訳ねェだろ?河合が首ンなったのも初めて聞いたってのによ」
「案外顔が狭えんだな。友達もあんまいねえ方か?修学旅行や遠足の移動の際にゃ一人で座ってたクチだろ、御庭番衆」
「挑発されたってねぇ袖は振れねぇの。もう大人しく寝かせといてくれよ。たく、ヒゲ子の一人や二人、テメエらで何とかしろよ。丁度明日は水曜だ。マガジン買いに行くついでに引っ張ってくりゃいいだろ?」
「なぁる程!よしトシ、お前行って来い」
近藤に振られて土方がピクリと眉を上げた。
「ああ?何で俺なんだよ?俺ァ女は苦手っ・・・」
「何でって、そりゃ明日が水曜日だからだろ?明日はテメエら水曜派の祭りじゃねえか。行くしかねえだろ?大体苦手ってお前、ピーマン食べれない子供みたいな事言ってんじゃないよ!男なら食え、青椒肉絲を!」
「まあまあ万事屋、苦手なモンくらい誰にでもあるもんだ。いやぁ、残念だなあ、俺もさぁ、入院中じゃなきゃついてってやんのにな。ハハハ。青椒肉絲なんて、もう何年食ってねえかなぁ・・・・」
「しょうがねえな。グラさんの言う通りだ。こっちゃ入院中だからよ、何も手伝えねえや。まあ頑張って来いよ。スゲエぞ、ヒゲ子の黄金の左は」
「何、立ち読みさえしなきゃなんて事ないからよ、トシ」
「・・・マガジン買って帰ってくりゃいいってんじゃねんだぞ?お姫さん説得しなきゃねんだぞ?」
「残念。なぁ。俺達入院中だもんな?」
「うむ。頼んだぞトシ、入院中じゃなきゃ俺も行ったんだがな!残念だ!」
「・・・・・・・・・・・入院中な。はぁん。わかったよ」
土方はくわえていた煙草を指でつまんで立ち上がった。
ドアノブに手をかけ、にやりと目付きの悪い笑みを浮かべて四人を振り返る。
「じゃな。俺ァちょっと明日の準備で忙しくなっちまった。大人しく寝てろよ?せいぜいゆっくり休んでな」