第1章 目が覚めたら病院でした
そこで携帯のバイブレーションが机を揺らした。
慌てて手に取り画面を見ると、知らない番号からの着信だった。こんな朝早く、しかも俺が起きたことを知っているかのようなタイミングが妙だ。
出るか出るまいか、迷ったが思いきって応答した。
「も、しもし…」
恐る恐る声を出すと、やたらハキハキした声が俺の鼓膜を揺らした。
「ああ!良かったあ!こんな朝早く申し訳ありません!」
知らない男の声だ。そして拍子抜けするほど明るい。
「本当は当日にお電話を差し上げる予定だったのですがあ!すみません、忘れてましてえ!」
あまりに大きな声に耳を塞ぎたくなった。
素直なのは良い事だが、この場合その素直さは余計だろう。どこか幼稚な印象を与える男だった。
しかも忘れたからとこんな時間に電話なんて、なんと非常識な…。
しかしその口ぶりから、間違い電話だということが分かった。
「すみません、間違いだと思いますよ。番号。」
俺は親切にそう教えてあげる。しかし相手も引き下がらなった。
「えっ!?いやいや、冗談はお止め下さいよお!怒ってるんですか?怒ってるんですかあ!?」
確かに電話をしなかったのは謝りますけどお!と男は泣きそうなこえを出した。
「本当に違いますよ、あんた誰ですか。」
こんな怪しい電話、すぐに切ってしまえば良いのだが、その時の俺にはその考えが完全に抜け落ちていた。
乱暴に聞き返すと、男はさぞ嬉しそうにああ!と大声をあげた。
「申し遅れました!私、時空トラベリング株式会社の佐々木と申します!今回相模様の旅のナビゲーターをさせていただきます!」
「…はあ…」
これは…間違い電話というレベルの話じゃない。誰がそんなふざけた会社に用がある。
大体旅って何だよ、俺はそんな…
…あれ?
「何で俺の名前…?」