第16章 最後の悪あがき
***
全国大会2回戦は翌日に迫った。花織はあの日、鬼道との間にあったことを何も風丸に告げられずにいた。そして、風丸も花織に何も聞こうとはしなかった。戻ってきた時もおかえり、と花織に笑い掛けただけだった。あれ以来、2人の間には蟠りのようなものがあった。双方、それに触れない様に過ごしていた。
「花織、少しいいか?」
練習終了後、ボトルを片づける花織の背中に声を掛けたのは豪炎寺修也だ。豪炎寺は無口でありながらも、元々花織とは良好な関係を築けている。ことに地区予選決勝の前日の事件があってからは時々、花織を気にかけてくれているようだった。
「豪炎寺君、どうしたの?」
「風丸とは上手くいっているのか」
感情を露わにせず強い瞳で語りかける彼に、花織は驚いた。豪炎寺はあまり野暮なことを聞く男ではない。彼らしくない問いに花織は首を傾げる。
「上手くいっているなら構わない。だがもし、お前が鬼道に関して解決できていないなら」
「なんで……、知って」
花織が思わず声を漏らす。豪炎寺に鬼道についての相談をしたことはないはずだ。なのにどうして彼はそんなことを知っているのだろう。
「よほど鈍くなければわかる。……一応、そう言う場面にも居合わせたからな」
豪炎寺は、風丸とそれなりに仲が良かった。どちらも円堂の傍でサポートする者同士であり、何より先日は"炎の風見鶏"を2人で修得したばかりだ。加えて、地区予選決勝の前日の事件の時に彼は現場にいたのだ。……悟らない方が可笑しい。花織はようやく納得できた。
「……、決めているつもり。でも本当にこれでいいのか、本当はどうすればいいのかはまだわからないの」
言いにくそうに花織が呟く。豪炎寺はそうか、といつものように無表情に零した。
「悪いことをしたな」
「え?」
思いにもよらない言葉に花織は首を傾げる。何故この関係、花織と風丸、そして鬼道の関係に対して豪炎寺が謝罪するのだろうか。花織はどういう意味なのか豪炎寺に問おうとしたが、豪炎寺はもう踵を返してしまっていた。
何だったのだろう……。花織はまた首を傾げる。今日の豪炎寺の謝罪の意味が分かったのはもう少し後のことだった。