第9章 帝国の刺客
花織は照れたように風丸に微笑みかけた。花織が練習に割っていった理由の中でも一番の理由は、これ以上風丸の腕が傷つくところをみたくなかったからだ。もちろん、染岡にも豪炎寺にも怪我をしてほしくないという気持ちはあった。だがそれよりも、何よりも風丸の身を案じての言葉だった。
「あ……」
風丸が花織の腕を引く。花織の身体は強く風丸に引き寄せられ、風丸の身体に身を寄せる形になった。2人の鼓動はまるでシンクロしているかのように早くなってゆく。こつんと互いに額を寄せ合うと風丸は小さな声で花織に囁いた。
「豪炎寺の言うとおりだ。……俺は花織が怪我をするのが嫌だ。だからこれからも無茶だけはしないでくれ。……じゃないと俺の身が持たない」
「うん……。本当はもっとみんなの助けになりたいけど……、ほどほどにする」
胸に温かいものが湧き出てくる。仲間たちとの勝利では満たされない部分にそれは深くしみわたっていった。風丸は思う、こんな風に温かい時間が続けばどれほど幸せだろうと、ずっとこのまま自分が彼女の傍にいられたならば……。
「おーい!風丸ー!月島ー!」
円堂の声がふたりの耳に届く。風丸と花織は互いに微笑みを見せ合うと、ゆっくりと立ち上がった。そして仲間たちの待つ広場へと足を速める。
近いうちにこの小さな幸せすら不安に変わる時が来るとも知らずに。