第4章 毒薬の功名※
彼女の右肩が赤く染まっていく。
おそらく毒抜きはもう十分だ。
あとは止血をして、傷口が塞がるのを待てばいいだろう。
間違いなく医者に見せたほうがいいだろうが、身体に刻まれた古傷の数々を見る限り、医者になど診せにいくことはしなさそうな人だ。
傷口の上からぎゅっと晒を巻きたいところだったが、自分の腕に巻かれたそれは短く、到底傷を覆うことなどできそうにはなかった。
(…晒がたりない…。)
仕方なしに、彼女の体に幾重にも巻かれた晒へと手を伸ばす。結び目を緩めれば、張りのある丸みに白い布がはじかれるように緩み、布よりも白く滑らかな双丘の谷間が開く。
あまり見ないように、といっても目には入ってしまうのだけれど、その布切れを剥ぎ取り、しっかりと肩に巻きなおした。
目を閉じたままのその少女は、陶器の人形かのようなほど美しいが、目を覚ましているときと比べると、かなりあどけない顔をしている。
(さらさらだな。)
と、気付けば少し赤が散ったブロンドの髪に手を伸ばし、すっと梳いていた。自分の行動に驚き、独り赤面する。
(…なにやってんだか。)
我に返って目の前に広がる光景を改めて目の当たりにする。
血まみれの金髪の少女が衣服が切り裂かれて、肩には白い晒がぐるぐるとまかれ、上半身があられもない姿で横たわっている。
軽く眩暈がした。
(この状況だけを誰かに見られたら、間違いなく俺が悪者になるな。)
それに気付くと、どっと疲労感が襲ってきた。