第3章 強盗とウェイター
店を閉めるために、店の扉の外を確認しようと戸に手をかけたとき、
「よぉ、まだやってるかい?」
と、覆面の柄の悪そうな4人組が手にナイフを持ち、店の中にずかずかと入ってきた。
強盗様のお出ましだ。
私を取り囲むように陣取り、ナイフの先端をこちらへと向けていた。
『すみません、本日はもう、閉店で…』
言い終わる前に、正面に立つ男が自分の腹部へ向けて右拳を突き出してきたので、とっさに斜め後方に飛び退いた。
すると、遠くからキラリと光るものがこちらめがけて飛んできた。弓矢だ。
目の前の男の影で気付くのが遅れ、よけきれず、
(!)
右肩を矢じりが切り裂いていき、鮮血が散った。
『…くっ。しくじった。』
目の前の強盗は4名、それに、店の外から矢を打ってきたやつを足すと少なくとも5名の集団のようだ。
(利き腕をやられるとは情けないが、四の五の言ってられないか…。)
「この店の金と武器を出せ!」
利き腕を負傷しながら戦うには若干不利な状況だが、こうなってしまったら、なんとかするしかない。
すぐさま腰の短剣を鞘ごと手に取り、ひとまず、目の前の男の鳩尾に短剣の鞘を思い切り突き立てると、男はくぐもった声を漏らしながら、身体を折り、ひざから崩れるように倒れた。
「兄貴!!っっ。この生意気な!調子に乗るなよ小僧!」
一人の男の掛け声で、強盗達が武器を構えて襲い掛かってくる。
『ふざけるなはこっちの台詞だ!』
相手の顎の下に鞘を振り上げ、後ろのもう一人には急所に蹴りをいれた。
どさっという音とともに、大の男二人が床に寝転がった。
すると、先ほどの矢を受けた右肩から徐々に麻痺していくような感覚が広がってくる。
(毒矢だったか…。)
残りの一人が、腰が引けたまま吐き捨てるように言う。
「お、お前、化け物か…?毒矢が効かないなんて…。」
やはり、先ほどの矢には即効性の毒薬が施されていたようだ。この痺れ方は、おそらくへビの神経毒の類だろう。
『あぁ、やっぱり…。毒には、少々慣らされてるんでね』
そう、独りごちたとき、店の外からガサッと物音がした。