第3章 悲しい過去
別荘に戻ると、リビングのソファーで読書をしている一ノ瀬さんの姿が目に入った。
私は彼に近づく。
「一ノ瀬さーん! 何読んでいるんですか?」
彼は私に気付くと視線を本から私に移した。
トキヤ「……別に何でも良いでしょう?
……そういう君は、どうしたのですか?」
「えっと、遊んでたら良いメロディが浮かんだから、メモしようと思って」
私は五線譜を取りに自分が使う部屋へと行こうとするが、あることを思い出し、足を止めた。
「……あ、一ノ瀬さん。そういえば、ソロ曲のメロディが一応出来てるんですけど……。聴きます?」
そう問いかけると彼の表情が少し柔らかくなった気がした。
トキヤ「…ええ。是非、聴きたいです。
今、用意してくれますか?」
「…っ! はいっ、 ちょっと待ってて下さいね!」
私は急いで部屋に行った。
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「……あ、あったあった…」
私は新しい五線譜と、ソロ曲のメロディが書かれている五線譜を手に持つ。
(…一ノ瀬さん、どういう反応するのかなぁ……。
……やっぱり、色々と指摘されちゃうのかな……?)
私は曲を何曲も作ったことがない。
だから、まだ出来ないことだってたくさんある。
……でも
一ノ瀬さんが私を信じて選んでくれたから
彼の期待にそえるように
頑張って曲を作らなきゃ。
どんなに高い壁があっても、
なんだって、乗り越えてみせる!
そう決意した私は、一ノ瀬さんが待っているリビングへと足を運んだ。